第二話『夢見る男』
カフェにて
あーあ・・・腹減ったなぁ・・・一昨日から何も食ってない・・・ここに来れば誰かに
会えると思ったんだけど・・・っていうか・・・誰か来てくれないとこのコーヒー代も払えない
・・・誰か来てくれ!!!俺は腹ぺこなんだぁぁぁ・・・
まったく・・・あいつら見る目がないよ・・・あの絵は久々の自信作だったんだぞ!!!
これはイケる!!!これは凄いって!!!自分でも興奮して眠れなかった程なんだ。それを・・・
唐変木のアホウどもが・・・あいつらの目は節穴だよ・・・あの絵の素晴らしさが分からないなんて
・・・この世界から去るべきなんだよ・・・ったく、冗談じゃない!!!
あっ、ヤバい・・・あいつだ・・・頼む・・・気付くな・・・気付くな・・・キ・ズ・ク・ナ・ヨ・・・よし・・・
よし・・・あぁぁぁぁ・・・よかった!!!金返してないんだよねぇ・・・天は我を見捨てず!!!
しかし、この頃あいつ・・・売れてるよなぁ・・・ったく、何てあいつの絵が売れて・・・俺のが
・・・やめやめ!!!人と自分を比べるようになっちゃ・・・おしまいよ・・・俺は俺、そう、それでいい
・・・そうさ、このコーヒーカップだって、誰かが考えて作ったものだ・・・この世の中のモノすべては、
何者かによって作られている・・・この灰皿も、このテーブルも、この店も、この石畳も、この街も
・・・そうなんだ!!!皆、ソウゾウの産物なんだ!!!・・・この美しいバラの花も神が創造したモノだ・・・
あの美しい女性の・・・魅力的な唇も・・・瞳も・・・髪も・・・おっ・・・こっちを見てる・・・あれっ・・・
えっ・・・うっそ・・・もしかして・・・俺?・・・どうする・・・さりげなく・・・手を上げたりなんか・・・しちゃう
・・・あぁ?・・・なぁんだ・・・はぁ・・・そうなんだ・・・みんなソウゾウの産物なのである。
あのルノアールも言っている・・・「僕は美しいものをただ描く」と!
そう!!!自分の美しいと思うモノを描けばいいのさ!!!
大勢の芸術家たちがここで・・・この街で・・・自分を探して来た・・・ウェルレーヌ、マラリメ・・・
ユトリロやモディリアーニは毎日ぐてんぐてんに酔っ払いながらも・・・若き日のピカソは、
素面にもかかわらず、アポリネールやマックス・シャコブラらに喧嘩をふっかけていた・・・
クリムト、シーレ・・・この街の女たちをこよなく愛したロートレック・・・あのブレヒトさえ
刺激を求めに来た街・・・そう!レビューの女王ミスタンゲットが歌ったようにサ・セ・パリ!!!だ!
俺もこの街で必ず自分を探す・・・自分を表現してみせる!!!・・・必ず・・・見てろ!パリ・・・
俺は・・・俺は!!!(お腹が鳴る)
あっ、カモみっけ!(手を振る)・・・あいつだったら、奢ってくれるよ・・・さぁて・・・どうやって・・・
ご機嫌とろうかなぁ・・・サ・セ・パリ・・・サ・セ・パリ・・・
『サンジェルマンにおいでよ』
サン・ルイ島の近くの穴倉の店に みんなで集まり 哲学の議論さ
楽器が音をがなり立て 青春の爆発だ 煙草はもくもく 気分は最高
想像力のない奴は家に引っ込んでればいい アドリブきかせる 青春の溜まり場さ
ヴィアン ヴィアン ア サンジェルマン ダバダバディ おいでよ ア サンジェルマン
喋って 笑って 歌って 踊ろう 酔いしれるひととき 青春に乾杯
二十歳の頃は 狂おしい時代 今を生きるのさ 人生に乾杯
頭が空っぽになるまで暴れて 今 この瞬間に 青春に乾杯
ヴィアン ヴィアン ア サンジェルマン ダバダバディ おいでよ ア サンジェルマン
アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン
アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン ア サンジェルマン
心が空っぽになるまで喋れば 未来は素晴らしい大人になれるさ
ヴィアン ヴィアン ア サンジェルマン ダバダバディ おいでよ ア サンジェルマン
アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン
アレ ヴィアン ヴィアン ヴィアン ア サンジェルマン
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